女房子供が9時に寝て、時間ができた夜。
もちろんこんな時間に眠いはずがありません。ではどう過ごすか。
ええ。手持ちの楽器を眺めるに決まっています。男ならあたり前田のキャプチュードですよね。
というわけで先日手に入れたSELDERのパーツ欠品ジャンクプレべを眺めます。
しかし、衝動買いの産物ゆえ冷静になると使い道が浮かびません。それにしても、つくづくフレットの造りが雑。音程ひどそう。
「やっぱりゴミのようなベースだなあ。」と、あきらめかけていると、ふと目についたのはこれもジャンク品で手に入れたTOKAIのネック。
そっと合体してみると、「ピピタアッ」とジョジョばりの擬音が聞こえそうなくらいにつきづきしいではありませんか。
手を放しても動かないくらいサイズピッタリ。
珍しい。
さらに、「プレべでこの配色ならこれを・・・」ということでミラーピックガードをあてるとこれもサイズぴったり。
3部位の合縁奇縁を感じます。
こうなったらあれですよね。
そう。世界のアイドルベーシスト「スティーブ・ハリス」風シグネイチャーモデルに仕立て上げます。
というわけで翌朝。
まずはきれいにしよう、ということで、SELDERの電気・金属を全てバラして洗浄し、軽く乾かします。
例によってマジックリンとオイルのコンビネーションで洗浄&保湿。
ほんの少しお日様にあてて乾かします。
その後ノイズ対策として、マスキングテープを貼り
SONICの導電塗料を用意します。これは水性なので他のものより気軽に使える点が秀逸。
SONICさんは何というか、痒い所に手が届くパーツをいろいろと提供してくれるので助かります。
ペタシペタシと塗って乾燥させます。
ボディはこれで下準備完了。
次に、TOKAIネックとSELDERボディを接合しましょう。
微調整のためボディをロータリーでサンディング。この作業はおがくずが出て掃除が面倒なので、炎天下にもかかわらず外でやります。
娘のアンパンマン机を拝借。
トラスロッド調整用にポケットも作ります。
本来ならトリマでやるところなんですが、ロータリー持っていたついでに高速研磨しながら彫っていくと
火がでました。
こわいので回転数を落としながら続けます。
どんな分野にも言えますが、つくづく手抜きはするものじゃないですね。
申し訳ていどにシーラーを塗り、一時間くらい放置します。
目の前のサンエーで夕飯の材料でも買ってきますわ。
乾きました。ネックとボディを仮接合してドライバーでネックに穴をあけます。
これが一番重要ではないかと思います。かつて失敗して痛い目にあったのですよ。
穴を確認したら再びクランプで固定して接合します。
接合完了。目視では隙間なく収まりました、よしよし。
弦をはるまで油断はできませんが、屋外作業はこれでおしまい。
今度はパーツの組み込みです。手配した金属・電気系統部の仕様は
PG:アルミガード
PU:フェンダーUSA製
ブリッジ:フェンダーのバダス風ブリッジ(FENDER ( フェンダー ) / HIGH MASS BASS BRIDGE IV BRASS SADDLES)
ポット類:CTS製
コンデンサ:オレンジドロップ
ブリッジをはめてみましょう。フェンダー製。現在では市場に出回っていないバダスⅡの代用品として使われるケースが多いようです。
確かに似ています。
さらに巷のうわさによると「付属品としてついているレンチがまったく合わない」とのことです。
本当でしょうか・・・。いくらメリケンでもそんなイージーミスはありえないのでは・・・と思って差し込むと
本当に合わない。
このご時世になかなかオツなトラップ。
本家フェンダーの一発ギャグということで笑って許しましょう、識者の皆さま。
持っていたレンチで仮調整します。
ブリッジを固定し、ピックアップを仮設置します。
さて、ここからはんだ作業。ノイズ対策として、アース処理に力を注いでみます。
そーれ、クリンと。
うまくのりました。
続いてアース線にもはんだをのせます。といってもアース線がなかったのでベルデン依り線で代用するという贅沢なことをしてしまいました。いいのでしょうか。
くっついた。
まずはピックアップ部に接地します。
そしてアッセンブリにもアースをつなげつつ、ピックアップにも配線します。本当は手順を細かく記して、自分や実践してみたいものの仕組みをよくわかっていない自分と同じベーシストへの参考としたいのですが、いかんせんはんだ付けしながらの写真撮影は厳しい・・・。
アッセン部はこんな風に接地しました。フジゲンの個体を参考にやってみました。
専用のものがなかったので、金属端子ダブル重ねです。
よし、これで電気系統完成。
下から見るとちょっと格好いいですね。
では、仮組みしてみましょう。ここは作業のほとんどがハンダ処理で若干疲れました。
アルミピックガードをかぶせてあわせます。ボディのネジ穴と合わない部分はピックガードに合わせてドリルで掘っていきます。ジャンクボディだと、心なしか罪悪感も少し薄らぎます。
このアルミPGは、むかしヤフオクで500円くらいで入手したのです。自分の他に誰も手を挙げなかったという、めったにない幸運で。・・・送料の方がかかった記憶があります。
どこの製品かはわかりませんが、しっかりつくられた日本製で、裏には導電処理が施されています。いい品ですよね。
ここまできたらフレットも磨いてみましょう。マスキングテープを指板に貼ります。
フェルナンデスのスクラッチメンダーを塗ってキッチンペーパーで軽くこすっていきます。
ごらんのとおりピッカピカ。やりすぎるとフレット減りを起こす危険性があるのでほどほどに。
アルミPGをロータリーで削りました。トラスロッド部にレンチを差し込みやすくするためです。
というわけで弦を張って完成。
写真では黒味がかっていますが、実物は青ラメとアルミピックガードが合わさって、世界のアイドル、スティーブ・ハリス風にはなりました。
ちなみに、今回組み立てたのは、現在のシグネイチャーモデルの「前の」バージョンです。↓
ここら辺りの年代が好きだったというおじさんベーシストはいませんか?
いますねよね?
わかってますとも。
さて、オクターブ調整とPU、サドルの諸々点検をしたあと、実際に鳴らしてみます。
ところで、スティーブ・ハリス風をつくるなら、ピックアップはダンカンのSPB-1だろ!と、ここまで読んで強く突っ込みたくなるファンもいらっしゃるかもしれません。
確かにその通りなのですが、いかんせん今回はジャンク安ボディとジャンク安ネックの集合体ですから、比較的素直になりを拾う(主観です)SPB-1を搭載すると、「ああやっぱりしょぼい音がするね」となりそうな懸念があったので、フェンダーUSA製にしたんですね。
こっちの方がある程度のクオリティにしてくれる・・・何というか鳴りの悪い楽器でもなんとか聞ける音にしてくれる期待があったのです。
さて、長い道のりでしたがアンプにつなげます。
第一印象は・・・
・ノイズがほとんどなし。処理を丁寧にやった甲斐があった。
・プレべの力強い音が、予想以上に出る。
・アルミPGの影響は(導電処理されているせいか)あまりない。キンキンはしない。
・接合は大丈夫そう。今のところ反らない。
さすがフェンダーPU。そしてブリッジも重みがあって低音を支えてくれます。自宅練習用に作製したものの、バンドレベルでもいけそうと感じました。
もちろん、細かい触り心地や音量差などに改善点はありますが、遊び楽器としてはなかなかの音。さすがフェンダー。アッセンブリにCTS等使ってフェンダー同様にしたのもよかったのかもしれませんね。
とりあえず一安心。メイデンメドレーをつま弾きましょう。Aces High、The Trooper、 fear of the dark・・・気分はスティーブ・ハリス。鏡の前に立ち、椅子に足をかけ、ネックを銃口のように観客側に向けてみましょう。
↓ここから後日談
さて、今度はこのベースをスタジオに持っていき、定期バンド練であわせてみました。
そして比較機として持って行ったのは、カスタムメイドの「moonジャズベース」。
「は・・・?」とか
「ええぇぇ・・・」とか
若干理解できない。もしくは引いた方。
宜しい。大変宜しい。正常な神経をお持ちです。
最高の材料を一流の職人が真剣に仕上げた楽器と、どうしょうもない材料を素人が遊んで継ぎはぎしたフランケンシュタインのような何か。そんなものを比べてはいかんのです。
とはいえ、こういう改造系の音というのは、プラシーボ効果が加わるものですから、持ち主は主観的に「あ!意外にいい音がする」と思い込もうとする傾向があります(そんな人多いでしょう?)
ですが、ここは客観性を重視したい。私と同じような素人ベーシストが、共通の悩みを分かち合ったり、苦笑いしたりする見聞録になればいいな、と始めたブログですので、初心を忘れてはいけません。
そんな理由で、このハイエンドベースの登場です。
スタジオに持ち込まれた、moon カスタムジャズベース
アクティブ・パッシブ切替可のジャズベースです。
スペックは
ネック:メイプル インレイ
ボディ:ホワイトアッシュ
PU:オキザリス(純正)
内蔵プリ:アギュラー OBP-3
塗装:ブルーバースト マッチングヘッド
これだけでもお腹いっぱいですね。もちろん泣く子も黙る「PGM」工房による組み立てです。
以下の曲をmoonカスタムメイドJBとなんちゃってスティーブハリスPBの両方で合わせます。ご協力いただいたバンドメンバーには感謝しきりです。
もともとの造りの違いを考慮しつつ、ジャンルの違うこの2曲で音を比較。
①「The Trooper 」Iron Maiden
mooJB→いい音。抜けが良くて上品。何だろう。ドリムシがメタリカのカバーをやったときの感じに似ている。「いい音すぎる」あの感じ。さすがムーン。素晴らしい透明感。
今回のPB→意外と抜けてくる。おそらくフェンダーPUとブリッジの力が大きい。もともとの鳴りはわかりませんが、ミドルの主張があって80年代のメイデンに合う。
トータルバランスはもちろんmoonに軍配があがるが、ゴリゴリした主張ある音はなかなか気もちよい。スコア10-7くらいの健闘っぷり。
②「Only So Much Oil In The Ground」Tower Of Power
moonJB→ロッコのきついミュートと、それにともなう音量差の補正が楽。演奏性の良さがいい。鳴りもいいし締まっているし、本当このベースはいいな・・・。要するに文句なしです。
今回のPB→残念ながらごまかしきれない。プレべゆえにミュート感はジャズべより出しやすいものの、出音の粗さが目立つ。「ピックアップで増幅している音だな」とばれます。
ベースの役割がシビアになるとmoonの引き締まった出音が際立ち、素材の違いを感じる。スコア10-3くらい。
今回搭載したフェンダーUSAピックアップの印象は
・ミドルと高音をいい感じの色にする。
・ある程度のクオリティに引き上げてくれるが、木材の鳴りを「細かく」拾うものではない。
・安ベースでも聞ける音にしてくれる。
ダンカンPUシリーズとはこれまた系統が違うが、さすがフェンダーはどんな楽器でもある程度のクオリティに持っていくのだなと感じました。こういうジャンク品に乗っけるのはアリかと思います。
比較機がmoonだったことを考慮すると、なかなか使えるベースになりました。いつぞやのフレッシャーのように、「音が拡散していく」出音ではないので、ロック向けにはアリです。今後はメタル風の曲に使ってみます。
いやあ。楽器改造って本当にいいものですね。